金沢からディズニーリゾートに向かう高速バスで大惨事が起こってしまいました。マスコミを通じて皆さんも周知していることと思います。この原稿を書いている時点では、真相はまだ明らかにされていませんが、運転手の居眠りが原因であることはすでに報道されています。多くの人々を乗せて観光地に向かう楽しいはずの旅行が暗転しました。きっと乗っていた人たちすべてがまさかこんな事故に遭うなんて誰もが考えていなかった筈です。それが現実に、たった一人の人間の不始末によって多くの命が奪われ、多くのけが人を出してしまったのです。被害に遭われた人たちのことを考えると断腸の思いです。しかし、今回の惨事に至った根本的な原因は、たった一人だけだったのでしょうか。
今回の事故に至る伏線は、バス事業者の認可の大幅な規制緩和に始まります。国は、自由競争の促進という大義名分のもとに平成12年頃に大幅に許認可要件を緩和しました。この時期を境にして貸し切りバス事業者は雨後の竹の子のように増え続け、需要以上に供給が増え、過当競争に入っていったのです。事業者数が増えてその事業者間の競争になると当然のことながら運賃の値引き競争が勃発します。その結果、受注は幾分増えるものの収入が減り、収益が減ります。そして、仕事量は増えるのに収入、収益が減るということは、それ以上の人件費をかけられないため、既存の労働力に過大なしわ寄せがいくことになります。それがやがて過重労働となり、それが原因で重大なミスを引き起こしてしまうのです。創業当時の各事業者は、きっと夢と希望を膨らませて計画を作り、営業を展開したことでしょう。しかしながら現実は、規制緩和という国の陰謀とも取れる美辞麗句に翻弄され、無理な事業展開にスパイラルして行ってしまうのです。規制緩和は業界圧迫でもあるのです。国及び行政というものは、まことに自分たちの都合の良い方向にしかシフトしていかないのです。ここには不祥事を起こした企業、企業経営者、当事者がそれぞれにもちろん大きな責任が存在します。しかし、そういう環境になることを想定しながらも国の都合だけで法律を改悪していく責任は、まさに国そのものにあるのです。
この規制緩和という国の悪しき手法には当社も苦い経験があります。以前国策として派遣事業者の許可要件の規制緩和をしたときに当社も子会社の派遣会社を設立し、事業を開始しました。折しも派遣需要は当時旺盛で、派遣登録者はたくさん存在し、当社の事業関連でガソリンスタンド業務やイベント需要を見込んだのです。しかし、この時も派遣業者が林立し、事業者間の値引き合戦、派遣登録者の取り合いなどでお互いの首を絞めあったのです。この時の緩和のからくりは、元来仕事の斡旋は公共職業安定所、いわゆるハローワークが行っていたのですが、失業者が増えるにつれ煩雑さが増し、公共職業安定所はパンク状態になっていました。国としてはこの煩わしい仕事を減らすことを考えたのです。それが民間に職業斡旋事業をおろす規制緩和という御旗のもとの改悪立法だったのです。資本主義社会は自由競争ではあります。けれども民間に許可を与えたから許可を与えた国、行政は責任をとりません、では、どうも納得がいかないのです。規制緩和によって事業環境が悪化した業界に対しては再度規制をかけていく努力が必要ではないでしょうか。タクシー業界も規制緩和の被害者です。薬事法の規制緩和もはたして良い方向に向かっているのでしょうか。電力の民間売買も進行中ですがどうも現状の説明では納得がいきません。太陽光発電関連業者やEV車メーカーが商売上で盛り上げているだけではないことを祈るばかりです。確かに規制緩和は、ビジネスの領域を広げ、経済効果を発揮するかもしれません。しかしながら、規制緩和からの弊害が多く出ている現状からは、実施を行った緩和策をしっかり監視して弊害をなくす方向を模索するべきと感じます。国の都合の良いだけの方策を今後もしっかり見破らなければなりません。